高病原性鳥インフルエンザとは
1 本病の特性
(1)鳥インフルエンザのうち、死亡率が高いか、ウイルスが変化して死亡率が高くなる可能性のある特定のウイルスのものをいう。
 鶏、あひる、七面鳥、うずら等が感染し、神経症状(首曲がり、元気消失等)、呼吸器症状、消化器症状(下痢、食欲減退等)等を呈する。
 鳥から鳥へ直接感染するだけでなく、水、排せつ物等を介しても感染する。
(2)生きた鳥との接触等により、人に感染した例が知られているものの、食品(鶏卵、鶏肉)を食べることによりインフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていない
 
2 発生状況
(1)これまで、香港、中国、米国、ドイツ、韓国等世界各地で発生している。日本では、1925年以来発生はない。
(2)1997〜98年に、香港で人の感染が報告されたことから大きく注目。
  
■ 鳥インフルエンザに関するQ&A  厚生労働省
Q1: 高病原性鳥インフルエンザとは、どのような病気ですか?
  トリもA型インフルエンザウイルスの感染を受けますが、トリのウイルスはヒトのインフルエンザウイルスとは異なったウイルスです。鳥類のインフルエンザは「鳥インフルエンザ」と呼ばれ、このうちウイルスの感染を受けた鳥類が死亡し、全身症状などの特に強い病原性を示すものを「高病原性鳥インフルエンザ」と呼びます。鶏、七面鳥、うずら等が感染すると、全身症状をおこし、神経症状(首曲がり、元気消失等)、呼吸器症状、消化器症状(下痢、食欲減退等)等が現れ、鳥類が大量に死亡することもまれではありません。
Q2: これまでにどのような国で発生していますか。
  香港(H5N1型:1997年,2003年)、米国(H5N2型:1983年,2003年)、オランダ(H7N7型:2003年)、ドイツ(H7N7型:2003年)、韓国(H5N1型:2003年)、ベトナム(H5N1型:2004年)等世界各地で発生しています。日本では、1925年以来発生はありませんでした
Q3: これまでにヒトに感染した例はありますか?
  1997年香港においてH5鳥インフルエンザに18名が感染、6名が死亡していますが、ヒトからヒトへの感染はありませんでした。2003年2月、同じく香港においてH5鳥インフルエンザウイルス感染が2名で確認され、うち1名は死亡していますが、その後の感染の拡大はありませんでした。2003年3-4月オランダではH7鳥インフルエンザウイルス流行の際に、防疫に従事したヒトを中心に数十人のヒトが結膜炎を、十数人インフルエンザ様症状を呈しました。死亡した獣医師1名の肺から鳥インフルエンザウイルスH7N7が分離されており、家族内でのヒトからヒトへの感染が疑われています。
Q4: どのようにヒトに感染するのですか?
  これまでのところ、香港などのように店頭での生きたニワトリの小売りが一般的な地域において発生した感染事例や、防疫業務に携わった人の感染事例など、まれにトリからヒトへの感染は見られた(数十例ほど)ものの、ヒトからヒトへの感染についてはオランダで疑わしいとの報告がわずかにあるのみです。またヒトが鳥インフルエンザウイルスの感染を受けるのは、病鳥と近距離で接触した場合、またはそれらの内臓や排泄物に接触するなどした場合が多く、鶏肉や鶏卵からの感染の報告はありません。
Q5: ヒトにはどんな症状がでますか?
  オランダの例(H7型)では結膜炎が主な症状でしたが、一部の感染者では呼吸器の症状も見られています。香港の例(H5型)では発熱、咳などのヒトの一般的なインフルエンザと同様のものから多臓器不全に至る重症なものまで様々な症状がありました。死亡の主な原因は肺炎でした。
Q6: ヒトではどのような予防方法がありますか?
  鳥インフルエンザに対する有効なワクチンは、現在のところありません(研究、開発が行われています)。本人の万が一の感染を避けるために、また付着したウイルスを他の地域のニワトリに拡げないために、鳥インフルエンザの流行が見られている鶏舎などへの出入りは、用事のない限り避けて下さい。用事があって鶏舎に出入りするときは、手袋、医療用マスク、ガウン、ゴーグルなどの着用、手洗いの励行などの、基本的な感染予防対策が必要です。
 通常の生活の中で、現段階では鳥インフルエンザウイルスに関する特別な予防を行う必要はありません。
Q7: ペットでニワトリや小鳥を飼っていますが大丈夫ですか?
  これまでの科学的知見によれば、鳥インフルエンザが鶏やアヒルの他にも、色々な種類のトリに感染することが知られていますが、国内で鳥インフルエンザが発生したために、これまでペットとして家庭などで飼育していたトリが直ちに危険になるということはありません。
 トリや動物は、ヒトへの感染の有無は別として、ヒトとは異なるウイルスも、ヒトと共通のウイルスも保有することが知られています。  
 トリに限らず、動物を飼う場合は、動物に触った後は手を洗うこと、糞尿は速やかに処理して動物のまわりを清潔にすることなどを心がけることが重要です。また、動物の健康状態に異常があった場合は獣医さんに、飼い主が身体に不調を感じた場合は早めに医療機関を受診することも大切です。
Q8: ヒトのインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザに対して有効ですか?
  現在使用されているヒトのインフルエンザワクチンはヒトの間で流行しているAソ連(H1N1)、A香港(H3N2)、およびB型に対して効果のあるもので、H5やH7などの鳥インフルエンザに対しては効果がありません。
Q9: 鳥インフルエンザにヒトが感染した場合、どのような診断方法と治療方法がありますか?
  鳥インフルエンザはヒトで流行しているソ連型(H1N1)や香港型(H3N2)とは異なりますが、大きな分類ではいずれもA型インフルエンザウイルスに属するものです。ヒトのA型インフルエンザウイルスの診断に使う迅速診断キットで、鳥インフルエンザウイルスを検出することは可能ですが、どの型のウイルスに感染したかの同定は、分離されたウイルスの抗原解析や遺伝子の検査など、さらに細かい解析を行う必要があります。A型インフルエンザの治療に用いられている抗インフルエンザウイルス薬も、鳥インフルエンザに効果があるといわれています。
Q10: 鶏肉や鶏卵を食べて、感染することがありますか?
  食品としての鳥類(鶏肉や鶏卵)を食べることによってヒトが感染をした例はありません。
Q11: 高病原性鳥インフルエンザウイルスが存在した鶏肉や鶏卵を食べても大丈夫ですか?
  我が国では、これらの病原性の高い鳥インフルエンザは、家畜伝染病予防法上、家畜伝染病(法定伝染病)として位置づけられており、発生した場合は、鳥の間での拡大を防ぐために発生の届出、隔離、殺処分、焼却又は埋却、消毒等のまん延防止措置が実施されることになります。したがって、これらの感染鳥やその卵が食品として市場に出回ることはありませんし、Q10のように、食品としての鶏肉、鶏卵などからの感染はないと考えられます。
なお、インフルエンザウイルスは、加熱(75℃で1分)により死滅します
Q12: 山口県の事例への対策は、どのようなものですか?(感染した鶏の処分は?)
  今回の事例では、ニワトリでの高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたものであって、ヒトへの感染は確認されていません。
 現在、農林水産省では、以下のような、家畜防疫の観点での対応を進めています。

・当該農場の飼養鶏全羽の殺処分、消毒

・半径30km以内の区域の周辺農場における移動の制限、疫学調査の実施
また、厚生労働省では、ヒトへの感染の防止や、万が一の患者の発生に備え、以下の対策を進めています。

・これまで、鶏肉や鶏卵の摂取によるヒトへの感染は報告されていないものの、念のため、当該農場に対し、出荷された鶏卵の自主回収、関係者の健康状態の確認、感染防御の徹底を指導

・万が一、患者が発生した場合に備えて、医療機関などに高病原性鳥インフルエンザが疑われる患者に関する情報提供の協力要請など、迅速な情報の把握
 このような取組を通じて、ヒトの健康被害の発生防止に努めています。
Q13: 発生農場の鶏の殺処分等に関わる養鶏従事者・獣医師等の感染防御は、どのようなものですか?
  ・ニワトリの殺処分と死体処理、検査などにあたっては、感染が疑われるニワトリの体液、排泄物等による汚染に注意し、作業に従事する者はそれらの体液等に直接触れたり、吸い込まないよう、ガウンを着用し、手袋をつけ、ゴーグル、医療用マスク等で防御すべきです。また作業終了後は、石鹸、流水による手洗いが必須です。院内感染予防対策におけるマスク、手袋、ゴーグルの装着、手洗いの方法などを参考に作業前に練習と確認を行い、確実に実施できるようにして下さい。

・作業に従事した者およびその家族については、健康状態に留意し、発熱などインフルエンザ様症状の出現などの体調に異常があった場合は、その旨を医療機関に伝えた上で直ちに診療を受けて下さい。

・万が一、国内でトリからヒトへの感染が確認された場合は、感染者に対しては直ちに抗インフルエンザウイルス薬による治療が必要です。さらにその家族など周辺の人々へは抗インフルエンザウイルス薬の予防投薬を行うことを考慮すべきです。
Q14: 外国でも発生していると聞きますが、海外旅行は大丈夫ですか?国内での旅行や移動はどうでしょう?
  現段階では、鳥インフルエンザウイルスの発生を理由に発生国への渡航の自粛、中止などの必要はありません。また、国内の旅行、移動も同様に、鳥インフルエンザウイルスの発生を理由にその土地への旅行や移動の自粛、中止などの必要はありません。但し不用意、無警戒に流行地の生きた鳥類のいる施設への立ち寄り、接触などは行わない方がよいでしょう。

国内における高病原性鳥インフルエンザの発生について(第2報)   平成16年1月13日農林水産省
<鳥インフルエンザウイルスの病性鑑定結果>

1 今般、山口県で発生した高病原性鳥インフルエンザについて、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所において、死亡鶏等の病性鑑定を引き続き行っていたところ、検出された高病原性鳥インフルエンザウイルスは血清亜型がH5N1であることが確認された。

2 なお、韓国等で分離されているウイルスと血清亜型が同一であるが、今回確認された結果のみでは、その関係を明らかにすることは困難であり、引き続き、感染経路の特定のための疫学調査を実施することとしている。

◆鶏卵、鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていません。



国内における高病原性鳥インフルエンザの発生について
 平成16年1月12日 農林水産省

 家畜伝染病に指定されている高病原性鳥インフルエンザの発生があったので、その概要をお知らせします。なお、国内では1925年の発生以来、79年ぶりの発生となります。
   
1. 発生の概要
所在地:山口県阿武郡阿東町
発生農場:採卵鶏農場(飼養羽数:34,640羽)
   
2. 発生の経過
 平成16年1月11日、管轄家畜保健衛生所から山口県庁経由で農林水産省に鳥インフルエンザの発生を疑う旨の連絡があり、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所において死亡鶏等の病性鑑定を行ったところ、H5亜型のA型インフルエンザウイルスの感染が確認されたため、当該鶏は高病原性鳥インフルエンザの患畜と確定された。
   
3. 防疫対応の状況
 
(1) 初動防疫措置として、発生農場について既に部外者の農場への立入制限、卵の出荷自粛、鶏舎の消毒等を実施している。
   
(2) 今後、公衆衛生部局とも連携しつつ、家畜伝染病予防法及び高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアルに沿って、発生農場の飼養鶏全羽の殺処分、消毒、周辺農場における移動の制限、疫学調査の実施等、必要な防疫措置をとることとしている。
 
移動の制限:鶏等の家きん、病原体を拡げるおそれのある物品等を対象とし、当面、発生農場を中心とした半径30km以内の区域で実施
   
4. その他
 
(1) 生きた鳥との接触等により、人に感染した例が知られているものの、食品(鶏卵、鶏肉)を食べることによりインフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていない。なお、3の移動の制限により、制限地域からの鶏・卵の出荷は禁止される。
   
(2) 厚生労働省においては、
 
食品を摂取することによる人へのインフルエンザ感染はこれまで報告されていないが、山口県と協議して、念のため、当該施設から出荷された鶏卵について自主回収を行うよう事業者を指導している。
また、諸外国では生きた鳥との接触により人に感染した事例が報告されていることから、山口県を通じて養鶏従事者等関係者に対し、健康状態の確認、感染防御の徹底を指導している。

  
 エマージング感染症
エマージング感染症は新たに人や動物の集団の中に出現したもの、または以前から存在していたものが急激に増加、もしくは広い地域で発症したものと定義されている。1993年WHOの会議でエマージング感染症、エマージング・ウイルスの呼び方が一般化した。

主なエマージング
1995年 エボラ出血熱 
1994年 ヘンドラウイルス
1993年 ハンタウイルス 
1989年 カニクイザルのエボラウイルス感染
1985年 牛海綿状脳症
1981年 エイズ
1977年 リフトバレー熱
人獣共通感染症
狂犬病など、人にも動物にも感染する病原体が問題になっている。こうした異種間の感染は、ウイルスの表面の突起が動物の細胞(受容体=レセプター)に適合していたものが、遺伝子の変異などで人間の細胞のレセプターにも適合できるように変化して起きる場合もある。
コロナウイルス
電子顕微鏡で見ると、ウイルス表面から花弁状の突起が出ている。この形が太陽のコロナのように見えるのでコロナウイルスと呼ばれている。コロナウイルスは3系統が知られている。人に感染するコロナウイルスは軽度の風邪のような症状を起こす。しかしSARSのような重症になることはなかった。SARSウイルスは、遺伝子解析などにより従来のコロナウイルスとは遺伝子的に、かなり異なる新しいウイルスであることが判明している。
 
種類 宿主 主な症状
SARSコロナウイルス 肺炎、発熱、呼吸器症状
暫定種 ウサギコロナウイルス ウサギ 呼吸器症状
3群 シチメンチョウコロナウイルス シチメンチョウ 下痢
3群 伝染性気管支炎ウイルス ニワトリ 気管支炎、胃炎
2群 ウシコロナウイルス ウシ 下痢
2群 ヒトコロナウイルスOC43 ヒト 風邪
2群 マウス肝炎ウイルス マウス  肝炎、下痢
2群 ブタ血球凝集脳脊髄炎ウイルス ブタ 脳炎
2群 ラットコロナウイルス ラット 唾液腺、涙腺の炎症
1群 ヒトコロナウイルス229E ヒト 風邪
1群 ブタ伝染性胃腸炎ウイルス ブタ 胃腸炎
1群 ブタ流行性下痢ウイルス ブタ 下痢
1群 ブタ呼吸器コロナウイルス ブタ 呼吸器症状
1群 イヌコロナウイルス イヌ 下痢
1群 ネココロナウイルス ネコ 腹膜炎
    


重症急性呼吸器症候群(SARS)についての情報

38度以上の高熱、痰を伴わない咳、息切れと、呼吸困難といった症状のある方は、必ず医師の診察を受けてください。
潜伏期は短く、2〜7日間と考えられています。
私用、出張等での海外渡航の予定のある方は、体に無理のない計画を立ててお出掛けください。
手洗い、うがい等励行してください。
喫煙者は禁煙に取り組んでください。
感染が疑わしい時は、直ちに病院でご相談ください

WHOの重症急性呼吸器症候群SARSの仮訳
(平成15年3月24日WHO改訂版)

  問1SARSの症状はどういうものですか?

  答:

SARSの主な症状は、38℃以上の高熱、痰を伴わない咳、息切れと呼吸困難です。また胸部レントゲン写真で肺炎の所見が見られます。SARSには、頭痛、筋肉のこわばり、食欲不振、全身倦怠感、意識混濁、発疹、下痢など他の症状が見られることもあります。


  問2SARSの感染力はどの位ですか?

  答:

現在分かっている範囲では、感染した人との濃厚な接触で人から人に病原体が伝播すると考えられます。感染した人の飛沫、体液に接触することが感染の重要な原因とみられています。今のところ患者の大部分は、SARS患者に医療行為を行った病院スタッフ、患者と接触のあった家族の人達です。しかし、どの位の量の病原体によって感染が引き起こされるのかは分かっていません。


  問3SARS患者はどのように管理すればよいのでしょうか?

  答:

SARS患者は、ドアが閉鎖された陰圧の病床などに入院させることと、呼吸器、粘膜からの感染を防ぐ厳密な感染防御対策(バリアナーシング)が推奨されます。SARSが疑われるが診断のついていない患者も、他の疾病の患者と同室にすることは避け、別の独立した病室を使用することが重要です。病院スタッフ、面会者は患者と接触する場合には、有効なフィルターの付いたマスク、医療用のゴーグル、ガウン、顔面カバーの着用が必要です。(注 医療機関での実際の対応の際には、318日付け結核感染症課長通知(健感発第0318002号)にお示しした患者の医療管理に関するWHO文書をご参照ください。)


  問4SARSの治療法は?

  答:

様々な薬剤が試みられましたが、現時点で予防、治療のために推奨される薬剤はありません。抗生物質は無効のようです。適切な防護体制の整った医療機関での保存的治療が中心になります。適切な保存的治療によって症状が軽減し、集中治療室から一般の病室に移ることが出来た患者さんもいます。


  問5この病気の病原体がわかるのにどのくらい時間がかかりますか

  答:

病原体を特定するための国際研究プロジェクトが3月17日立ち上げられました。世界10カ国にまたがる高度な技術を持った11の研究施設が毎日連絡を取り合いながら協力して病原体の特定に取り組んでいます。これらの施設には患者及び剖検例から様々な検体が集められており、病原体を特定するための検査が進行中です。


  問6SARSの感染が拡大する速度は

  答:

SARSはインフルエンザより感染性が低いと考えられています。潜伏期は短く、2〜7日間と考えられており、3〜5日だった症例が大部分です。しかし、海外旅行の移動が短時間で可能となったことで、患者が急速に世界中に拡大する危険性が生じています。


  問7SARSの最初の患者は、いつ、どこで報告されましたか?

  答:

平成15年2月26日に、男性1名が、高熱、痰を伴わない咳、筋肉痛、軽い咽頭痛の症状で、ハノイ(ベトナム)の病院に入院しました。この患者は、入院後4日の間に呼吸困難が悪化し、高度の血小板減少>と呼吸窮迫症候群の徴候を示して、人工呼吸器を必要とするようになりました。


  問8現在までに、何例のSARSの患者が報告されていますか?

  答:

平成15年2月1日から3月24日の間に、17例の死亡者を含む456例が報告されています。SARSの初期症状は、インフルエンザを含む他の多くの疾患と同じです。世界中でこの病気の危険性に対する認識が高まり、公衆衛生当局の関心が深まったことで、疑い例のサーベイランスが充実し、迅速で正確な報告が行われるようになりました。しかし、報告された疑い例のすべてがSARSと証明されたわけではありません。世界中から数多くの患者報告や、うわさが流れていますが、これらのほとんどがSARSと初期症状が良く似た、インフルエンザのような疾患の、毎年冬の時期に見られる流行に過ぎませんでした。SARSの報告患者数と、死亡者数の累計は、WHOのホームページで常に更新されています(注 厚生労働省ホームページからリンクされています)。


  問9何カ国からSARSの報告がされていますか?

  答:

平成15324日の時点で、13カ国から報告されています。このうち4カ国では輸入例のみで、その地域での二次感染は報告されていません。このように、患者が報告された国でも、国内での病気の拡大を示唆する情報は無く、一般の住民には感染の危険性がないと考えられています。


  問10中国広東省の集団発生との関連はありますか?

  答:

平成14年11月に広東省で発生した、非定型(通常と異なる)肺炎の集団発生を解明するための調査は、現在も積極的に行われています。この調査からの知見が、広東省の事例とSARSの関連の有無を明らかにする一助になると思われます。


  問11SARSは生物テロですか?

  答:

SARSに生物テロが関与していると示唆するものは何もありません。


  問12一般の人が、心配する必要がありますか?

  答:

この病気は重症になることもあり、海外旅行により、比較的短期間に複数の国に拡大しました。従って、今後も十分に注意する必要があります。しかしきちんと予防対策をとればSARSの感染性は高くはありませんし、死亡率も低いです。315日のWHOの緊急情報以来、孤発的な症例の報告のみであり、二次的な集団発生は生じていません。


  問13今、旅行しても大丈夫ですか?

  答:

WHOは世界のどの地域に関しても旅行制限を勧告していません。しかし、全ての旅行者は上記のSARSの主な症状、徴候を理解しておくべきです。これらの症状が生じた者で、SARSと診断された人と濃厚な接触をしたか、SARSが拡大している地域に最近旅行した人は、医療機関を受診し、旅行歴を伝えて相談する必要があります。上記の症状が見られる旅行者は、完全に回復するまで移動しない方がよいでしょう。


  問14WHOの国際旅行勧告の目的は何ですか?

  答:

WHO315日公表した勧告は、人々に対してSARSがどのような病気であり、どのようなことを医師に報告する必要があるかを説明するためのものです。WHOの勧告は旅行のキャンセル、変更を勧めたものではなく、貿易、観光は制限されるべきではありません。この勧告の目的は旅行者、公衆衛生当局の関係者、医師の認識を高めることが目的であり、旅行を制限するものではありません。


  問15今回の事例がさらにインフルエンザの大規模な流行になる可能性は?

  

確かに当初懸念されましたが、検査上、SARSの病原体がインフルエンザウイルスであるとする結果は得られていません。


  問16WHOが勧告している内容は?

  答:

WHOは国際的サーベイランスを継続し、疑い例を各国の衛生当局に報告するよう勧告しています。WHOは同時に各国の衛生当局に疑い例の発生に注目しつづけ、推奨された感染防御方法を実施するよう強く勧めています。SARS患者は隔離した上で、バリアナーシング(病原体封じ込め看護手技)を行い症状に応じた治療を行う必要があります。


  問17一般の人はどうすれば最新の情報を知ることができますか?

  答:

一般の人も、疾患の発生とその対応方針を毎日更新しているWHOのホームページで情報が得られます(注 厚生労働省ホームページからリンクされています)。また、複数の国の公衆衛生当局が一般および医療関係者向けのホームページを立ち上げて情報を提供しています。


  問18WHOはどのように対処していますか?

  答:

WHOは国際的感染症対策ネットワーク(Global Outbreak Alert and Response Network GOARN)を通して、関係各国と協力してこの集団発生の世界への拡散を追跡するとともに、すみやかに病原体を特定し、診断の精度を高め、推奨される治療法を情報提供できるよう努力しています。またWHOは患者発生国の公衆衛生当局とともに、必要な疫学、医療、物資の援助を行っています。 WHOの疫学、診療、感染制御、検査の専門家チームは各国、特にベトナムの担当部局を支援しています。ハノイのWHOの派遣チームは世界中の多数の機関から人的、物的な協力を得ています。またWHOの疫学チームは香港と中国本土の調査にも協力しています。


  問19多国にわたるSARSの集団発生に対する国際対応の目標は?WHOが調整している国際対応の目標は;

  答:

この集団発生を封じ込め、終息させること 病原体を特定すること 有効な治療法を確立すること必要な人的、物的支援を行い、患者発生国の公衆衛生当局に協力すること 公衆衛生当局に情報を提供し、国民の不安に対応すること


  問20前向きな成果は得られていますか?

  答:

良好な保存的療法により、ベトナムでは相当数の患者の病状が改善しています。さらに今回の国際的なサーベイランスシステムは感度が高く、疑い例をすみやかに報告できる手段であることが立証されました。世界中の公衆衛生当局がSARSの危険性に深い関心を払っています。過去3週間の症例についての情報の蓄積によりこの病気の病態が明らかになることも期待されています。国際的サーベイランスの導入と症例のすみやかな隔離により、現在のところ、二次的な集団発生は回避できています。




前立腺がん 早期発見のポイント

日本人
前立腺がんは増加しています


前立腺がんは高齢者特有のがんで、その発生には人種差や地域差が多いと言われています。しかし、同人種でも居住地により発生頻度,死亡率が違い、同じ日本人でもハワイ、米国に移住することでその率が高くなることが知られています。 日本では今、高齢化社会に突入し、生活様式が欧米化してきている背景から、まさに前立腺がんが急増する諸条件がそろったと言えます。国際的な疫学者、故平山 雄氏の推計によると、2010年には12,683人が死亡すると予測しています。(図1)
PSA検査は
血液から客観的に判定出来ます。


排尿困難を主訴として50歳以上の男性が受診してきた場合には、I−PSS(international prostate symptom score)を使って自覚症状を聞き取り、より客観的に症状を把握することが第一歩で、その次に直腸内触診とPSA検査です。直腸内触診には専門医としての経験と、医師の主観が入りやすい傾向がありますが、その点PSA検査はごく僅かの血液から得られた客観的数値から前立腺がんの存在を判定できるという、優れたマーカーです。
PSA検査の的中率は45%

直腸内触診以外に、PSA検査と経腸的前立腺エコー検査がありますが、PSAの敏感度は約80%、直腸内触診、前立腺エコーの敏感度は約40%です。しかし、検査の敏感度が高いからといって必ずしも診断力が優れているわけではありません。偽陽性が多くなるほど、敏感度は高くなるからです。そこで、検査陽性例の前立腺生検を行ったところ、PSAの陽性的中率は約45%を示しました。 この結果から、PSA検査を中心にして前立腺がんに対応して良いと言えます。

PSA検査は早期前立腺がんの指標

PSAは、従来のPAPとは異なり、早期前立腺がんを診断する能力が高く、現在もっとも臨床的に有用性の高い腫瘍マーカーです。その正常値域は3段階に分かれており、(表2)集団検診などのスクリーニングに使用されています。ただし、前立腺肥大症でも高値を示すことがあるため、4.1〜10.0のものを軽度にがんを疑う群(グレイゾーン)としています。この考え方は、厚生省研究班「前立腺がんの集団検診の妥当性に関する研究」(班長:渡辺 泱教授)でも推奨しています。
出典:前立腺がん−早期発見のポイント− 群馬大学医学部泌尿器科学教室  山中 英壽教授(武田薬品工業編)
PSA検査を利用して
前立腺がん早期発見を!
前立腺とは

前立腺は、男性の膀胱の下にある栗の実ぐらいの大きさの臓器で、真中に尿道と射精管が通っています。50歳をすぎた頃から、前立腺には肥大症やがんが増えてきますが、前立腺肥大症は前立腺の「内腺」が肥大しておこってくるのに対し、前立腺がんは前立腺の「外腺」に発生してくるという違いがあります。
大部分の前立腺がんの好発部位が前立腺辺縁部にあることから前立腺がんの臨床症状は出現が遅い。また局所症状が出る前に骨転移が起こり、腰痛などの骨転移症状が起こってから整形外科からの紹介で前立腺がんが診断されることも稀ではない。すなわち、初診時にはすでに約85%が根治不可能な病期であることは泌尿器科の経験するところである。そこで、前立がんを早期に発見し、治療することにより、上述の現状を打破しようという考え方が出てきた。前立腺がん早期スクリーニングの思想である。とくに近年、腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の前立腺がん検診の第一次スクリーニングにおける優秀性が証明されるにつれ、PSAによる前立腺がん検診(PSA検診)が、わが国各地で行われるようになった。わが国で行われている前立腺がん検診は人間ドック健診のなかで前立腺検査として、あるいは集団検診として行われている。
前立腺がんは、近年急増

欧米で、中高年男性に増えている前立腺がん。米国では、男性のがんの中でもっとも多いのが前立腺がんです。前立腺がんは日本でも急増中で、専門家は、50歳以上の日本人男性の20%に前立腺がんがあり、その2%はすぐに治療が必要だとしています。進行すると、トイレが近くなる 尿の出が悪く、排尿に時間がかかる、残尿感がある などの症状が出てきますが非常にゆっくりと進行するため、初期症状はほとんどありません。前立腺がんを早期に発見するには、直腸診・超音波診断・PSA(前立腺特異抗原)の3つの方法があります。なかでもPSAは、採血だけで検査が受けられるので、非常に有用なスクリーニング検査で最適な方法です。

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